ディープフェイク画像からの個人再識別化に関する検討
Abstract
SNS等に投稿する画像には無関係な他人の顔が写っていることがあり,プライバシーの漏洩に繋がる問題がある.漏洩対策として墨塗りやぼかしを利用することが一般的であるが,これらには元画像の文脈を損なう可能性が存在する.これに対し,近年ではディープフェイクと呼ばれる技術を用いて,文脈を保持しつつ,対象人物の顔領域を異なる人物の顔へ変換する技術が提案されている.これらの手法は文脈の保持のみならず,保護された画像に基づく元人物の再識別可能性が充分に低いことがプライバシー保護の観点からは重要である.しかし,既存研究では再識別可能性の検証が充分に行われていない.そこで,本研究ではディープフェイクを利用したプライバシー保護画像から元の人物への再識別可能性を明らかにし,これによりディープフェイクを用いたプライバシー保護の信頼性を検証することを目的とする.検証実験では,Facenetアルゴリズムを用いたCeleb-DFデータセット内画像の再識別を試み,異なる顔へ変換を行ったディープフェイク画像には,変換前の人物の特徴が一部残存しており,これにより一定の条件下ではディープフェイク後の画像から元画像の80%程度を再識別可能であることを示した.