便益評価尺度を用いたプライバシー情報開示における合意形成プロセスに関する検討

菅沼 弥生,西垣 正勝,大木 哲史
コンピュータセキュリティシンポジウム2019(CSS2019), CSS2019-10, pp. 756-763, 2019年10月.
[ Paper ]

Abstract

本研究の目的は,ユーザーとサービス提供者間で提供するプライバシー情報と享受する便益の間の十分な合意形成を行うためのプロセスを検討することである.Marian(2014)らをはじめとする従来の研究では,ユーザーのプライバシーに関する知識を向上させることにより,適切なプライバシー情報開示を支援することを目的としている.これに対し,本研究ではユーザーはプライバシー情報を開示する上で,提供するプライバシー情報に関する知識に加え,それと引き換えにサービスから得られる便益を重要な判断基準としている点に着目し,ユーザーとサービス提供者間において開示するプライバシー情報と引き換えに提供されるサービスによって得られる便益をユーザーが十分に理解する,合意形成の過程を通して適切なプライバシー情報開示を支援することを目的とする.本稿では,ユーザー自身が便益に対してどの程度の価値を感じているかを測定するための尺度を作成した.これに加え,プライバシー情報を開示する場面を想定した際に,ユーザーがとる行動と評価尺度での回答とを照らし合わせることで,ユーザーが得られる便益とプライバシー開示行動との関係を明らかにする.

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