忘れられる権利に配慮した生体認証:爪を用いたマイクロ生体認証
Abstract
近年,プライバシ保護の観点から「忘れられる権利」の必要性が度々議論されている.本権利はEUの一般データ保護規則に「消去権」として記載されたこともあり,世界的に注目を集めており,生体認証の分野においてもこの「消去権」への配慮が求められる.その一実現形態としてテンプレートを乱数でマスクするキャンセラブル生体認証(テンプレート保護技術)が存在する.しかしこの方式では,登録された電子的な生体情報を保護することは可能であるが,登録時や認証時に提示される物理的な生体情報の漏洩まで保護することは不可能である.本論文では,物理的な生体情報に対して「消去権」に配慮した生体認証を実現するため,人間の微細生体部位を用いたマイクロ生体認証システムを爪へと応用した生体認証システムを構築した.ユーザ実験を通じて有用性を検証した結果,本システムが物理的な生体情報に対してテンプレート保護技術に準じた安全性を提供できる可能性が示された.