眼球-頭部協調運動における生体反射型反応に基づく生体認証方式に関する検討

高橋洋介, 遠藤将, 松野宏昭, 村松弘明, 大木哲史, 西垣正勝
情報処理学会論文誌, vol.60, no.12, pp.2106-2117, Dec.2019.
[ Paper ] 2019年度情報処理学会特選論文

Abstract

生体情報は一般的に漏洩しやすいという重大な問題が存在するため,生体情報が漏洩した場合であってもなりすましが困難な生体認証が望ましい.これに対して,生体の反射に基づく反応(生体反射型反応)を利用した認証方式が提案されている.生体反射型反応は人間が自分で制御することが難しい生体情報であるため,不正者が認証情報を入手したとしても,正規ユーザになりすますことは困難であると考えられる.しかし,既存方式には生体反射型反応を計測するにあたって個人ごとのキャリブレーションが必要という問題がある(課題1).さらに,生体反射型反応には随意的な反応と不随意的な反応が存在するが,随意的反応には「ユーザの意思」という要素が介在する分,不随意的反応に比べて不正者が訓練などによってなりすましを成功させる余地が残る(課題2).本論文では,生体反射型反応を利用した生体認証の課題1と課題2に対応した認証方式の実現に向け,眼球-頭部協調運動に注目する.眼球-頭部協調運動は随意的な反応であるサッカード反応と不随意的な反応である前庭動眼反射に基づく反応の組合せからなる.ユーザ実験を通じて,サッカード反応と前庭動眼反射型反応それぞれの認証精度の評価を行った.基礎実験の結果,前庭動眼反射型反応に基づく生体認証はサッカード反応に比べて高い認証精度およびなりすまし耐性を有することを確認した.

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