顔認証システムの人種バイアスに影響を与える潜在的要因の調査
Abstract
顔認証システムは非接触で対象の動作を必要とせず,使い勝手の良い生体認証であることから市場が広がっているが,多くの顔認証システムは人種間の認証精度に偏りが認められており,犯罪捜査に用いられた顔認証システムの誤認識を原因として有色人種の誤認逮捕が起きてしまうなど,人種差別に発展する問題が発生している.これまで,認証精度の偏りは,学習データにおけるセンシティブ属性の割合に起因すると考えられ,それらを軽減するための方法として,データセットにおける偏りの除去や,偏りを考慮したスコア正規化アルゴリズムの提案などが行われてきた.一方,認証システム全体に着目すれば,これらの対策を行った場合においても,取り除けない潜在的なバイアス要因が残存している可能性がある.本研究では,潜在的なセンシティブ情報の一調査として,顔画像の解像度,明度,彩度等の環境要因の変化が人種間の認証精度の偏りに与える影響の調査を行う.BFWデータセット等の人種割合の偏りがないデータセットを用いた場合においても,テストセットの環境要因を変化させることで人種間の認証精度に偏りが生じるか検証する.