Location Privacy
概要
スマートフォンなどの普及に伴い,周辺エリアの混雑予測やユーザに合わせたルート案内といった位置情報を用いたサービスが注目されている.位置情報サービスの提供者は,保有している大量の位置情報(移動履歴情報)を第三者機関に提供することで,周辺地域における人気施設の検索や,ユーザの行動のモデル化など,様々な分析を行うことが可能である. しかし,位置情報にはユーザの趣味や職場,友人関係などの様々な情報が関連しており,十分なプライバシー保護処理を施さずに第三者提供,あるいは公開してしまうと,ユーザのプライバシーが侵害される危険性がある.位置情報に関するプライバシー保護処理やプライバシー保護処理が施された位置情報に対する位置情報推定攻撃の手法に関する研究は数多く存在する.特に位置情報のプライバシー保護処理について,ユーザの位置情報に対してランダムノイズ付与や位置情報の精度を低下させる手法が研究されているが,連続的な位置情報(移動履歴情報)は前後間の位置情報の相関性が高く,ランダムノイズ付与や一般化を行うだけでは元データに復元されてしまう恐れがある. このような背景から,ユーザの位置情報(移動履歴情報)を基に,実際のトレースではないプライバシー保護処理が施された大量の擬似トレースを生成する研究が数多く行われてきた.一般的な擬似トレース生成のアルゴリズムは,ユーザごとの実トレースから擬似トレース生成モデルを作成してプライバシー保護処理を施した後に,作成した生成モデルから擬似トレースを生成するという2つの処理により行われている.しかし,既存の擬似トレース生成手法ではユーザ間の友好関係や他ユーザとの出会いやすさが考慮されておらず,生成される擬似トレースが現実的なトレースではない可能性が十分にあると考えられる. そこで本研究では,ユーザ同士の出会いやすさを考慮した擬似トレース生成を目的として,トレース生成のパラメータに「ユーザ同士の友人関係」および「ユーザごとの他ユーザとの出会いやすさ」という2つの要素を新たに導入した擬似トレース生成手法を提案する.